
第88回 98.05.04くらい 『新日本電波系日記』
神の声が聞こえる。
今日のは、読者の声ではない。正真正銘神の声だ。いやいや、読者様は神様です。じゃなくて、どうやら万物の創世主の類の神だ。その神様がわたしの頭に電波を飛ばしてくるのだ。なんとも言えない声がいきなり頭の中に鳴り響いたのには驚いた。
「み…、や…、ち…、ょ……」
わたしを呼ぶ声が途切れ途切れに聞こえてきた。もっとも頭の中に声を響かせるなど、その辺にいるエスパーでもたやすいことだろう。わたしは、思わず辺りを見回した。そこには誰もいない。隠れるところなどありゃしない。やはり神の声に他ならないのだ。これが、エスパーの仕業なら、その辺に隠れているはずだからだ。神は見えざる存在だが、エスパーは見える存在だ。そうそう、小さい「ょ」の字を途切れさせて喋ることなど、神以外にできるはずなかろう。神様は、大変器用な芸をお持ちでいらっしゃる。
「わたしは神だ」
ふむふむ。
「わたしがこれから言う事をよく聞きなさい」
ハイハイ。
「ハイは、一回でよろしい」
ハイ。
「ところでだが、ここ最近人類の調子が悪いので、大洪水を起こして滅ぼそうかと思うのだ」
ええっ? なんでまた。
「だから、ここ最近人類の調子が悪いからだ。神の話はちゃんと聞くように」
ハイハイ。
「ハイは、一回でよろしい」
ええと、会話調で進めると話が長くなってしまうので、適当に端折らせてもらう。要はこんな感じだ。
・わたしは神だ
・大洪水が起こる
・人類は滅ぶ
・でも、おまえだけは助けてやる
・だから、箱船を作れ
・ちなみに、これは私信だ
・だから、誰にも言うな
・繰り返し言うが、わたしは神だ
ということである。つまり、私信、神なり、箇条書きというやつだ。
では、早速箱船を作ろう。何を隠そうわたしは箱船作りの名人なのだ。というより、むしろ箱船そのものである。それだけは、胸を張って言うことができるのだ。いや違う。胸を張っても、それはハト胸というやつだ。箱船とハト胸には直接の関係は無い。
それどころか、わたしは箱船作りの名人ではなかった。何しろ、今まで箱船なんぞ作ったコトが無かったのだ。そもそも、一生のうち一度でも箱船を作ったコトがある人など、この世に何人いるのだろうか。聞いたことがあるのでは、ノアくらいしかない。いや、ノアはもうこの世にいなかったか。嗚呼、それは盲点だった。
盲点といえば、わたしの本棚も盲点だった。本棚をよく見たらあったのだ。箱船の作り方。「たのしい図工」に載っていたのだ。どうやら、牛乳パックをチョキチョキと切って貼り付ければ、立派な箱船ができるらしい。牛乳パックを再利用するという地球に優しい箱船である。さすがは神様である。全世界の人類の未来の為に気をつかっているのである。
そういうワケで、楽しい工作の時間である。チョッキン、チョッキン、チョッキン……、これに各部を貼り合わせれば完成だ。ペタ、ペタ、ペタ……
は〜ればで〜きたぜ は〜こぶね〜
箱船が完成したところで、再び神様がわたしの頭に電波を飛ばしてきた。
「では、来るべき大洪水に備えて、地球上の様々な動物をひとツガイずつその箱船に乗せるのだ」
ええと、その場合、ヒトはどうしましょうか?
「ヒトは、おまえとおまえの奥さんを乗せていればいいだろう」
それですが、ちなみにわたしは独身なんです。ええ結婚したいくらい好きな娘はいますけどね。きゃっ
「おかしいなあ。このリストによると、おまえはツガイになっているハズだが」
たしかに、わたしは独身ですよ。ちなみに、あまりにもいい男なんで、世間ではわたしのコトをナイス・ガイなんて呼んでますけどね。まあ、裏を返せば、無いツガイとも言いますが……
「裏は返さなくていいが……、ああっ!!」
ええと、神様、どうしました?
「このリスト、一段ズレて見ていましたわ。間違い電波でした。ええと、失礼しました」
なるほど、最後に失礼しましたと電波を送ってくるとは、なかなか見どころのある神様だ。大抵、黙って切ってしまうからなあ。礼儀正しい神様だ。いやいや、案外イタズラ電波かもしれないなあ。でも、まあいいや。今度から留守番電波モードにしておこうっと。
というわけで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。
↑これは日記猿人のなんたらボタンである。
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