
第83回 98.02.24くらい 『20××の年オリンピック』
まったく、すごいものを作ってしまったのだ。
というのはこれである。正直言ってこんなに凄いものができるとは、思ってもいなかった。キラキラと白く輝く結晶。これは、きっと世界を変えるに違いない。それだけのものだと、すっかり確信してしまったのだ。
最初は、ほんの遊び心のつもりだった。詳しくは語れないが、ある微生物の遺伝子をいじっていたら、偶然、#$%と呼ばれる物質を体内で生成する微生物が誕生したのである。#$%とは未知の物質であったが、その特性はすぐに解明された。生物に投与すると、その生物のDNAを複製する際、情報欠落を最小限に止める効果があるようだった。DNAが均質に複製できる為、実質無限上に複製を作成することが可能となる。
解明されると、すぐに増産するべく、またぞろ遺伝子をいじってみることにした。そこで、成長の早い微生物の遺伝子を組み込んでみたのである。この微生物は、!’&という物質を生成する性質がある。ちなみに、!’&という物質は、タンパク質の電気抵抗を低くする性質を持っている。タンパク質ベースの常温超伝導体の媒体に使われている物質だ。こうした結果、%!ケ%ホ2&という物質を生成する微生物が誕生したのである。
時間を持て余したので、TVを付けた。しかし、最近はTVもすっかりつまらなくなってしまった。特につまらないのが、このオリンピックというやつである。昔はどうだが知らないが、今となっては全く無意味なものだ。こんなものに金をかけるくらいだったら、もっと有効な使い道があると思うのだ。
そもそも、このNHKという放送局も人から無理やり金を集めるくせして、こんなものに金をかけるのだから困ったもんである。これこそ無駄使いの極みである。だいたいだ。21世紀の今となっては、誰もこんな番組など見る気がしないのだ。視聴率は、3%も無いだろう。最早オリンピックなど、誰も見向きしないのだ。
だいたいだ。出てくる選手が情けない。泣いてばかりいる。夏のオリンピックの時など、100メートル9秒3を切ったとか言って大泣きしていたバカがいた。そんなもので嬉しいのか? それに輪をかけて情けないのが、我が日本の選手達である。9秒6で見事に完敗である。毎日仕事もせずにトレーニングして、ようやっとその程度かい。わたしが走ったら、もっとも早く走れるぜ。なんなら8秒だって切ってやるぜ。
その他の競技も似たようなもんだ。あいつら全員、このわたしの足元にも及ばないだろう。まったく、こんな番組を見ている奴等の気が知れないというもんだ。嗚呼、それはわたしのことか。しかし、いくらヒマをつぶすためとはいえ、こんなくだらないものを見てしまうとはなあ。さて、時間なので、そろそろ出かけることにするか。うん。今日はデートなのだ。
それでだ。%!ケ%ホ2&という物質の安全性を確認する為に動物実験を行ってみたのだ。すると驚くべき効果があることがわかった。
第一に、寿命が従来の3倍に伸びた。おそらく、DNAの複製エラーを抑える#$%の性質が元になって、細胞分裂の限界回数が増えたのだろう。動物の細胞分裂は、回数に限りがあると言われている。何度も細胞分裂を繰り返すと、そのうち頻繁にエラーを出すようになるらしい。それで寿命が決まってしまうと言われているのだ。
それだけではない。この結果、筋肉の発達がほとんど無限になったのだ。しかも、成長が早いのだ。わずかな負荷を与えるだけで、グングンと筋肉が成長していくのである。
第二に、神経の伝達速度が早くなった。電気抵抗を低減する!”’の効果だろう。思考速度や反応速度といったものが格段に早くなったのだ。もちろん動体視力も数段UPした。飛んでいる昆虫の羽の動きも見えるくらいだ。
第三に、無害である。これだけの効果があるだから、何かしら副作用があるのかと思いきや、身体への害は確認されなかった。
動物実験で確認した後、わたしは恐る恐る自分でも試して見た。結果は、まったく問題無しである。最早、肉体の成長などあきらめていたのだが、%!ケ%ホ2&の効果で筋肉がグングン成長していくのが確認された。新陳代謝が活発になったのか、肌もツヤツヤになった。思考速度が早くなったおかげで、頭まで冴えてきたようである。
これは、人類の夢であった若さを取り戻す薬のようである。しかも、微生物から作られる。増産が可能だ。画期的な発明である。おそらく、世界中に広まるだろう。世界中のみんなが使うようになるだろう。そう、一部の人を除いては。
おや。まだ来ていないようだ。では、少し待つとするか。
街頭の巨大スクリーンにはオリンピック中継が映し出されていた。女子の体操である。出てくる女の子は、皆なよなよとした貧弱な体をしていた。あんなに貧弱では早死にしそうだなあ。やはり、彼女らは%!ケ%ホ2&を使っていないのだろう。オリンピックは、未だに%!ケ%ホ2&が禁止薬物だというからなあ。
「ごっめーん。待ったーあ?」
おやっ、どうやら彼女が来たようだ。その時、わたしは巨大スクリーンを見ながら、ふと思った。まあ、貧弱な体の女の子も良いかもしれない。なにしろ、わたしの彼女に比べれば、ずっと可愛く感じるのだ。
筋骨隆々の彼女がもの凄い勢いでやってきた。
というわけで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。
↑これは日記猿人のなんたらボタンである。
98年目次
前
次