
第76回 98.01.13くらい 『大人になんてなりたくない(前編)』
いつまでも子供でいたい。大人になんてなりたくない。
いい歳をした大人が言うセリフではないだろう。そう思う。そう思うけど仕方が無い。なにしろ、わたしはまだ成人式を済ませていないのだ。だから、まだまだ子供なのだ。わーい。わーい。
ここだけの話だが、わたしの生まれた街の成人式は、大変恐ろしいものだ。なにしろ、やぐらの上から飛び降りをしなくてはならないのだ。まあ、地面にぶつからないように足にロープを結んでおくのだが、それでもやっぱり大変なものだ。
最近でこそ、技術革新によりロープに弾力性のある素材が開発されたおかげで、股関節が脱臼するなんていうこともなくなったが、昔は成人式といえば、救急車が何台も出る始末だったのである。
わたしは、そんな恐ろしい成人式はイヤだと出席しなかったのだ。そして、いたたまれなくなって街を飛び出すことになったのだ。みやちょハタチの時のことである。
言い忘れたが、わたしの出身地は、アフリカのコンゴ民主共和国である。勇猛果敢な部族の村の出身だ。わたしも幼い頃から柔道で鍛え、弐段を取るまでに至った。だから、戦闘においての勇敢さには自信がある。しかしながら、恐いものは恐いのだ。
そもそも、足にロープを結んで飛び降りることと戦闘することの勇敢さは別物である。なんで村の人達は、こんな簡単なことに気づかないのだろうか。戦闘において足にロープを結んで飛び降りることなどないではないか。そんなことをしても、せいぜい相手がビックリするくらいの効果しかないと思うのだ。
わたしは、荒川の土手を散歩しながら、そんなことを考えていた。なぜならば、雪が降ってきたからだ。雪がー降るー。荒川ー区内ー。
とにかくだ。雪を見ると故郷のコンゴを思い出すのだ。……と書くと、「コンゴには雪が降らないぞ」と言う読者もいるかもしれない。しかし、それは誤解である。コンゴだって寒い時は寒い。雪だって降る時は降るのだ。あまり知られていないことだが、あの有名な歌はコンゴ民謡を元にしたものなのである。雪やコンゴ。あられやコンゴ。
さておきだ。わたしが何者なのかというと、実はタレントなのである。来日当初は、鍛えた体を利用してプロレスラーをしていたのだが、数年前に身体を壊して引退し、タレント業に転向したのだ。若い読者の皆さんも、一度くらいは聞いたことがあるだろう。ストロング・コンゴ。
とは言い条、最近はテレビに出る機会がめっきり減ってしまったので、若い読者は知らないだろう。やっぱり、ギャラが安くてもテレビに出ないとなあ。生活もままならないのだ。
売れなくなったタレントほど悲惨なものはない。それでも、まだ結婚していれば奥さんの収入でなんとかやっていける。しかし、これが離婚してしまったタレントなら、シャレにならないくらい大変なことである。それこそ、食うにも困るというヤツだ。
実際、あの清水國明も離婚してからは、「クーコとはできなくなった」と漏らしているくらいだ。でも、まだレギュラーを持っているはずだが。
さて、荒川の散歩も中盤に差し掛かった時のことである。土手には和服姿の女の人が倒れいてた。成人式に行く途中に転んでしまったのだろうか。わたしは、取りあえず声をかけた。
「もしもし、お嬢さん大丈夫ですか?」
彼女は振り向いて、こう答えた。
「ええ、ちょっとけつまづいて転んだだけですの。土手だけにドテッと」
ベタベタのダジャレである。
よく見ると、彼女の周りには大量のイモが転がっていた。変なところにイモがある。父ちゃん、このイモ、何のイモ?
「変な歌を歌わないでね」
彼女は言った。
なるほど。こんなところにイモがあっては、けつまづいて転ぶのも無理はない。というよりも大変危険である。まったく、この国の危機管理はどうなっているのだ。行政は何をやっているのだ。これでは「イモ、そこにある危機」と言われても仕方が無いというもんだ。
それで、どうなったのかというと、実は明日に続くのであった。
というわけで、今日の分はおしまいだ。では、また会う日まで。
↑これは日記猿人のなんたらボタンである。
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